なかま通信

No.64 2023 4月号を発行しました

「ダイバーシティの考えが浸透し、女性活躍促進を重要視する経営者も増えつつあります。

これにより、女性だからという理由で就職や昇進の機会に恵まれない。という事態は減っていくでしょう。

一方、女性のみ使えていた場所などが「男性も使える様にするべき、性的指向や性自認に関わらず使える様にするべき」という議論も生まれています。

女性が冷遇されていた場面が改善されることはとても大切。当然男性も、LGBTQの方々も、冷遇されていた場面が改善されるべきですよね。

ただ、今まで女性が安心して利用していた場所がそうではなくなることで、窮屈に感じたり不安を抱く可能性もあり、最悪の場合傷ついてしまうこともあるかもしれません。

多様性が広がることで、新たな女性の悩みや困り事がまた生まれたら、どうしたらよいのかをみんなで参加し考える場がもてたらいいですね。

話を聞く側の私達も、社会の流れを吟味しながら様々な視点や思考を持ち臨まなければならないと襟を正す思いです。

どんな社会になろうと、女性を取り巻く問題はあるかもしれません。

大切なのは、孤立する女性を一人でも少なくすること。

話せる場所がある。相談に行ける場所がある。一人じゃない。女性のそういう場になれる様、これからも女性の相談を聴いていきたいと思います。」 

 

No.63 2022 10月号を発行しました

日本には「女、子ども」との言い方があります。なぜ「女、子ども」なのでしょうか。このフレーズは守られる者、として使われることが多いのです。守られる者とは弱者であり、守る者は強者であるとするとそこに上下関係も生まれます。では女は守られる存在なのでしょうか。それにしては現代社会の中で女が抱える問題は多すぎます。しかも難題ばかりです。

 

例えばDVについて。現在「共同親権」が法制化されようとしています。DV被害の当事者は子どもと共に身を隠すこともできなくなります。親権には監護権と重要事項決定権の二つがあります。DVですでに離婚した二人がこの二つについて話し合えるかを考えると不可能に近いことがわかります。

またいつも女に課せられるのは「ケア役割」です。「介護保険」の改定が今も審議中で、改定が決定すると「介護保険」の使用基準が厳しくなり費用も上がり、自宅療養者が増え身近な介護者が必要となります、又々女達の出番になります。介護制度はまさしく女性問題なのです。「共同親権」や「介護保険」の改定に際して、フェミニストカウンセリングに携わっている私達はパブリックコメントや院内集会に積極的に参加していくことがとても重要なことです。

「女、子ども」このフレーズはもう過去のものとして「守られる」存在ではなく「女性問題を含む人権を護る人」でありたいと願っています。 

 

 

No.62 2022 4月30日号を発行しました

先日、久しぶりになかまの事務所を訪れた帰りに見た、四ツ谷駅前の夜桜。なんと甘やかで優美だったことでしょう。まったく人影はなく、ゆっくりと花と向き合うことができたぜいたくな時間でした。一方でコロナ禍以前の、活気にあふれた人混みをなつかしく思う気持ちもあり、複雑な心境でした。

 

私たちはコロナ禍での失業や減給、休業、生活の困窮、在宅ワークによる環境の変化など、喪失感や悲しみ、苦しさと向き合わざるを得ません。そのなかで、形の見えにくい不安や不満、モヤモヤが家庭内でDVや虐待といった形で表れ、女性たちがますますケア役割を求められ、自責感、無力感を内面化させていくことを危惧しています。

 

また、日々の暮らしのなかでさりげなく挨拶したり、声をかけ合うというささいな関わりがどれだけ大切であるかを痛感しています。同じ空間を共有し、言葉や心を通い合わせることができにくい状況が、さらに不安や孤独をふくらませていると思うからです。

 

私たちの相談業務は対面を第一に、状況に応じてオンラインや電話相談と工夫しながら、休むことなく女性へのサポートを続けています。困ったら行く場所がある、気持ちを聴いてもらえる、という安心安全の場を確保し続けられたらと思っています。失ったもの、またそのなかから新たに生まれてくるものを信じて、丁寧に相談者に寄り添い続けていきたいです。

 

No.61 2021 10月30日号を発行しました

 

 この頃はコロナの影響であまり遭遇しなくなったが、以前はファミリーレストランや電車の中で時折女性たちの会話が聞こえてきた。内容は分からないけれど、相手に相槌を打ってはいても互いに自分の言いたいことだけ言って、実のところ対話になっていないことが多い。それでも、しゃべりたいだけしゃべると、「あー今日は楽しかった」とお開きになる。結構人って他の人の話、聞かないんだなと思う。だからこそ私たちの「話を聞く」ということが仕事になるのだけれど。

 

 何かに困って、行き詰って、誰にも言えなくて、聞いて欲しい、何か知恵を貸して欲しいと、私たちのところにいろいろな方が会いにいらしたり、電話を掛けてきてくださる。その方たちのお話を聞きながら私たちは、その辛さや悲しみ、怒りはどこから来ているのだろうかなどを考えながら話を聞いていく。そしてどうしたら少しでも幸せになれるか一緒に考えましょうというスタンスで向かいあう。

 

そのため、私は相談者に質問をする。「その時あなたはどう感じたのですか」「できるものならどうしたいですか」「何が一番不安ですか」等々。それは私が相談者の状況や悩みをなるべく正確に理解したいためと、質問に答える過程で相談者が自分自身を客観的に見る手助けになるだろうと考えるからだ。それでもこういった質問が相談者を追い詰めてしまうことがあるようだ。滅多に人に言えないことを「ただ聞いて欲しい」という相談者にとって、あれこれ質問されるのは言いたいことを聞いてもらえないといった印象になってしまい、ちゃんと聞きたいという私の願いは的外れで押しつけがましくなるのだろう。

 「聞く」ことは、やはり難しい。「聞いてもらえて」心の荷が少しでも軽くなるということもあるだろうし、思わぬことを「聞かれて」不快になることもあるだろう。私たちは、重い荷物を抱えて話してくださる方々に、誠実に謙虚に向かい合って、その話を聞きたいと思う。

 

No.60 2021年 4月30日号を発行しました。

 

相談室で話をうかがいながら感じるのは、長引くコロナウイルスの蔓延の中で多くの女性が、経済的にも精神的にも苦境に立たされている姿です。働く女性は突然の解雇や雇い止め、休業などによって経済的に追い詰められ、生活の困窮は単身者やシングルマザー、高齢者にとっても深刻な問題になってきています。特に一人暮らしの高齢者は地域の活動の場がなくなり、人との関係が絶たれる孤立のつらさが加わっています。

 

今までは相談室に来ることによって、自分の悩み、生きにくさ、不安なメンタルを支えてきた相談者にとってはそんな大切な場を失うことも大きな問題でした。外出自粛が長引けば、これまでのように外に出て人と話すこともさらにできなくなります。在宅ワークで夫がいることでのなんとも言えない閉塞感、圧迫感は、電話相談すらできない状況に女性を追い詰めています。

 

それでもこのコロナ禍の中で何かがゆっくり変わっていく気がします。煩わしい人間関係から解放され、人や社会との関わり方が変化していく。自分にとって要るもの、要らないものがはっきり見えてくる人もいるでしょう。

 今号のなかま通信は「女性と危機」をキーワードとして現在の社会情勢のなかでの女性たちの姿を特集しています。

 

No.59 2020年 10月30日号を発行しました!

コロナ禍の夏のある日、2年ぶりに相談室を訪れた女性は開口一番、「今、みなさんはどうやって不安を抱えながら自分を保っているんですか?」と。そして、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって起きた出来事を次から次へと話し始めました。

 

 

どう行動するかを迷う中で葛藤が大きすぎて決めることが怖く、困難な日々です。政府や自治体のトップから最終判断は各々の選択で、との言葉でまた迷い始めて決められません。本当に疲れる毎日です。これから私たちは新しい生活様式の中で生きて行くため、自己決定に必要な考える力をどのように蓄えていけばいいのでしょうか?

 

 

都心から親の介護に週末通っていたAさんは、地方都市の実家で近隣住人から来ないようにと言われてショックを受けました。これからどうすることが親のためかと迷う毎日。また、在宅ワークの家の中、夫のイライラはピークに達し、その上、子どもたちは大さわぎの混乱した日常をどう乗り切ったらいいのかと悩むBさん。失業や減給、社会でのハラスメントの数々、家庭内で起こるDVや虐待なども、コロナ禍で増加しています。

 

 今、さまざまな困難課題を解決しながら安心できる生活様式を築いていくために、みんなで考え、知恵を出し合っていくことが急務です。良かったこと、上手くいったこと、安心できたこと、必要な情報等々を伝え合う機会をたくさん持てたらと思います。今号では、みなさんの考えるきっかけを提供できたらと、コロナ禍での女性相談室の現況をお伝えします。

 

No.58 2020年 4月30日号を発行しました!

2020年の春。世界中が大きな不安とショックの嵐に飲み込まれました。新型コロナウイルスの感染拡大は、医療崩壊を引き起こし、感染の経路もつかめないとなると、何をどう予防したら良いのか、難しい局面を迎えています。

 

 突然始まった小中高の学校一斉休校の子どもたちや、家庭で仕事をすることを余儀なくされた人々など、皆がイライラや不安を抱えており、ストレスでDVや虐待が日本でも増えてきています。私たちは、そうした暴力を産むジェンダーの問題に、従来から深く関わってきました。

 

「ステイホーム」という言葉で、女性たちの仕事がますます増えている様子は、誰にも想像できます。男性たちは「ステイホーム」をどう捉え、どう行動しているのか、聞いてみたくもあります。

 

近年、行政は女性相談のみではなく、男性相談も実施する所が増えてきています。しかし、男性の多くが「男は弱音を吐かない」や「相談はプライドが許さない」など、男としてのジェンダーに縛られているため、相談に繋がりにくい実情があります。そのような中で、私たちとしてもどのように取り組んで行くのが良いのか、今号の座談会で考えてみました。

 

No.57 2019年10月1日号を発行しました!

 私の心の何分の一かは、少女漫画でできていると思う。大学に入るまで漫画雑誌を読みふけっていた。少女漫画によって「女の子は可愛げがあるのが一番」とか「“王子様”に見初められて幸せになる」とかのジェンダー規範をしっかり刷り込まれた一方で、同性同士の恋愛や親からの虐待、児童買春といった、その頃は存在しないことになっていたテーマも、漫画を通じて取り込んでいった。当時、漫画はマイナーな表現手段だったから、一般受けしないテーマでも、あまり規制を受けずに描かれていたのだろう。

 

しかし私が少女漫画に惹き付けられたのは、そのテーマ性ではなく、「素敵!」というワクワク感だった。主人公の魅力的な表情(何度もノートに写し取った)や、フリルが幾重にもかさなって透けるドレスの美しさだったりした。新鮮な視覚表現にうっとりしながら、いざなわれるのは作り手も読者も女性が主役のアナザー・ワールド。そこで、少女が周囲に反対されても好きなことに打ち込んで、何にも代えがたい満足感を得たり、憧れの男性が主人公の行動に心を動かされて、彼女のサポーターになる、といった物語に親しんだ。主人公たちはかっこよかった。また切なかった。

 

フェミニズムという言葉は知らなくとも、「いろいろあるけれど、自分が好きなことを、言ったりしたりしようよ」というメッセージを少女漫画から受け取っていたと思う。

 

今回のなかま座談会では、漫画(主に少女コミック)から受けとったフェミニズムについて、スタッフで話し合ってみました。

 

No.56 2019年4月1日号を発行しました!

 

私たちは今、13年ぶりに東京で開催する「第18回フェミニストカウンセリング学会全国大会in東京」(2019525~26日ウィリング横浜にて)の準備に取り組んでいます。

 

シンポジウムのテーマは、「フェミニストカウンセリングを次世代にどう繋げるか~多様性・少数性を尊重しつつ~」。

 

シンポジストの方々とのミーティングや会場施設視察など準備を進めるにつれて、東京開催を決めた1年前よりも気の重さがなくなり、代わりにわくわく感が高まってきています。今の日本では「フェミニスト」や「フェミニストカウンセリング」という言葉が浸透する一方で、特にインターネット上ではこれらの言葉がネガティブなイメージとともに語られることも多く、無力感に襲われることもたびたびあります。こんな時だからこそ、全国大会の開催に向けて、私たちは以前よりも増して顔を合わせ話し合う機会を大切にし、自らをエンパワーしているのだと感じています。

 

No.55 2018年10月31日号を発行しました!

 

 このところ人権が基本から揺さぶられる出来事が相次いでいる。東京医大の女子受験生一律減点の報道、「新潮458月号に寄稿された杉田水脈議員の性的少数者を差別する記述である。

 

 東京医大は女子受験生の点数に係数をかけて一律に減点して合格者数を抑制していた。女性は結婚や出産で医師を辞める例が多く、激務に耐えられない、というのがその理由であった。女性の社会への参加をその入り口で理不尽に奪っていく許し難い行為といえる。一方、水田議員の発言では同性カップルは子どもを作らない、つまり「生産性がない」といった発言をしている。

 

 まだこのような事がまかり通っているのかと思うと心が冷たくなっていく。ただ新聞・ネットに次々と語られる反論、意見、当事者の声の多さに力づけられてもいる。女性受験生への対応として弁護団が組まれた。ここから女性差別の構造が明らかになってくることだろう。ロバート・キャンベル東大名誉教授は自分が同性愛者であることを公表した上で「ふつうにここにいて幸福である」と語っている。

 

 そんなときTVからケンドリック・ラマーのラップが聞こえてきた。「われわれは大丈夫だ」と歌っている。貧困、暴力に音楽で批判してきたラマーのピューリッツァー賞受賞である。前回#MeTooムーブメントを巻き起こすきっかけとなったこの賞が、次にどういう議題を提供してくれるのか楽しみになってきた。

 

 

 

No.54  2018年4月30日号を発行しました!

 

  SNSを使って性的被害の体験を共有する「#MeToo(私も)」運動が広がっています。昨年、アメリカのゴールデングローブ賞の授賞式で、ハリウッドの女優たちが、映画業界にはびこるセクハラに抗議して黒いドレスを着たことが話題を呼びました。さらに、この運動に勇気を得たとしてアメリカの体操の金メダリストが、twitterでチームドクターからの性虐待を告発し、それに伴い100人を超える被害者が声を上げました。スポットライトのもとで、堂々と胸を張って性暴力撲滅を訴える女性たちの勇気ある姿が社会に与えたインパクトは大きいでしょう。

 

実はこの運動、11年前に黒人女性のタラナ・バークさんが、差別や偏見の元、恵まれない環境下で社会の隅に追いやられていた性暴力被害者に、「あなたは一人じゃない、傷が癒される日は必ずくる」とメッセージを送った“Me Tooムーブメント”がきっかけでした。こうした地道な草の根の活動が、社会のうねりとなって今の運動につながったのです。

 

しかし、まだ日本では、性被害を受けた女性たちが胸を張って連携できる現状ではありません。この大きなうねりを、日本でどのように広げていけるのか…。まさに、それが今の私たちに突きつけられている課題のように思います。

2018年4月30日

 

 

 

詳しい内容はバックナンバーを         ご覧ください。

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